キャノン EOS Kiss デジタルX

予想以上の進化を遂げた、デジタル一眼レフのベストセラー機。デザインはほとんど変えずに、優れた画質の10メガCMOS、センサーの埃付着を防ぐ機構搭載。面白みはないものの、前モデルの弱点を克服し、完成度がより高くなった優等生。特にオートの性能は秀逸。
@1010万画素(APS-C) A2.5型液晶 B約3コマ/秒 C510g
EOS KissデジタルX 価格比較


1010万画素CMOS搭載、デジタル一眼の定番

EOS Kiss デジタルXは、ベストセラーを続けるKiss デジタルシリーズの3代にあたり、2006年7月に登場。初代EOS Kissから数えて10代目に当たることから、Xはギリシャ文字の10の意味も持たせている。

ソニー α100やニコン D80などの強力ライバルが出現し、普及・中堅クラスの底上げが多く見られた2006年の中にあって、キヤノンはEOS Kiss デジタルXは何と単体でシェア45%を狙うべく、先代からは予想以上の進化を遂げている。1010万画素CMOSを搭載することで画質の向上をはかり、センサーのゴミ取り機構「EOSインテグレイテッドクリーニングシステム」を新たに開発。加えてピクチャスタイル採用、液晶モニターの大型化、AF性能向上などレベルアップしている点は数多い。

外観からは想像つかない進化

外観上はEOSKissデジタルNと隣り合わせて見比べてみても、見分けがつかないほど変化がない。ボディ背面の形状と表面の仕上げが若干変わったくらいだ。とても小さなボディでコンパクトさはオリンパスE-500と並ぶくらいだ。ボディはブラックとシルバーの2色あるが、個人的にはブラックをおすすめしたい。その方が凝縮感があるし、表面仕上げの質感も上だ。ブラックの仕上げはマット仕上げだが、できればエンボス仕上げにするなどして質感を上げてほしかった。

グリップ形状とボディの厚みのバランスがいいので、小さいながらグリップしやすい。ただし手が大きいと、小指がグリップに掛からなくなってしまう。安定感はボディの高さに余裕があるニコン D80の方がよいだろう。

先代の弱点だった液晶は1.8型から2.5型の高視野のものに変更され、格段に見やすくなっている。色の再現性や明るさではまだ課題は残るが、同じスペックのEOS 30Dのものよりは明るく見やすい。

新たに搭載されたのが、センサーのゴミ取り機構「EOSインテグレイテッドクリーニングシステム」。オリンパスのようなセンサーを密閉した構造にはなっていないが、ローパスフィルターに超音波振動を与え、ゴミ振るい落とすというもの。この機能はカメラが起動するたびに作動するもので、2,3秒で終了する。起動中にシャッターボタンに触れれば、瞬時に撮影スタンバイ状態になるので、即写性を損ねる心配はない。

地味ながらAF性能の向上も図られている。測距点は7点からエリアの広い9点に変更。AFセンサーはEOS 30Dと同等のものが採用されている。AFスピードは先代とあまり変わらない印象だが、大口径レンズを使用したときの精度が向上しているという。おそらくスピード、精度ともにクラストップの性能だろう。

連写速度は最高3コマ/秒でJPEG最高画質で27枚、RAWで10枚まで連続撮影が可能。高いAF性能とあいまって動体撮影を苦にしないボディだ。

ホワイトバランスの性能も、キヤノンは以前から定評があり、ピクチャースタイ ルと合わせることで思うような色調にすることができる。このように自動制御の性能は卓越したものがあり、カメラまかせでも思うような画像が得られる。初心者でも安心して使えるカメラだ。

高い解像度、高感度が特徴

撮像素子は先代の800万画素から1010万画素に画素数アップ。スケジュール的に引き続き800万画素が採用されると思われたが、ライバルを意識してか、わずか1年半で役目を終えててしまった。これで画素数は上位機種のEOS 30Dを上回ったことになる。

画質は画素数アップの効果があり、精細感が増している。同じ10メガ機のニコン D80やソニー α100よりも解像度が高く、人の肌の描写などは生々しい。色調はEOS Kiss デジタルNとは傾向が異なり、ややナチュラル志向になっている。

画素数アップで画素ピッチが小さくなり、高感度時のノイズが心配されたが、ほとんどその影響はない。マイクロレンズの集光力を上げるなどして感度を保っているらしい。ライバルと比較してもノイズが少なく、解像度の落ち込みも少ない。ISO800でも十分鑑賞に耐えられる画質だ。これに手ブレ補正レンズを組合せれば、かなり多くの場面で手持ち撮影が可能になる。

あいかわらず総合的な画質面では同クラスでトップだろうが、ライバルたちが追い付いてきたのも事実。以前のような一目でわかるような違いはなくなった。

やや見劣りするファインダー

多くの面で改良が見られるEOS Kiss デジタルXだが、ファインダーは以前のままだ。視野率95%倍率0.80倍は今となっては少々見劣りするし、ピントの山が掴みにくい。AFでの使用を前提に作られているようで、像は明るくクリアなのだが、ボケが小さいのでピントが深く見えてしまう。ファインダーで厳密なピントの確認は難しい。

ファインダー性能はEOS Kiss デジタルXの唯一に近い欠点だが、カメラのキャラクター上致命的な欠点とはいえない。おそらくほとんどのユーザーは、このカメラでマニュアルでピント合わせなどしないだろうから。

EOS Kiss デジタルXはあらゆる面でそつがなく、とても高いレベルでバランスが取れている。誰が撮っても失敗がなく、安心して使えるカメラだ。しかし、マニアックなところがなく、カメラを操作することをあまり意識させない。あまりの出来のよさにちょっと面白みに欠けるきらいがある。

それでもEOS Kiss デジタルXは、誰にでもすすめられるデジタル一眼レフの定番機種だ。使ってみてがっかりさせることはまずないだろう。

(2006年12月20日作成)

EOS Kiss デジタルX 性能表
項目 仕様
有効画素数 1010万画素
撮像素子 CMOS サイズ:22.2×14.8mm
最高解像度 3888×2592 ピクセル
感 度 簡単撮影ゾーン:ISO100〜400相当自動設定
応用撮影ゾーン:ISO100〜1600相当(1段ステップ)
画像記録方式 RAW、JPEG、RAW+JPEG
記録メディア CFカード(タイプI、II準拠 2GB以上使用可)
マイクロドライブ
ファインダー ペンタミラーファインダー
視野率95%、倍率0.8倍
フォーカシングスクリーン固定式
液晶モニター 2.5型 約23万画素
オートフォーカス 測距点:9点
AFモード:ワンショット、AIサーボ、AIフォーカス
露出制御 測光方式:評価測光、部分測光、中央部重点平均測光
制御方式:プログラムAE、シャッター優先AE、絞り優先AE、自動深度優先AE、マニュアル露出、E-TTL II自動調光
露出補正:±2EV(1/2EVステップまたは1/3EVステップ)
シャッター速度 1/4000〜30秒(1/3ステップまたは1/2ステップ)、バルブ
連続撮影速度 約3コマ/秒
撮影可能コマ数 JPEG:27コマ (最高画質) RAW:10コマ
内蔵ストロボ ガイドナンバー13(ISO100・m)
シンクロ 同調速度1/200秒
手ぶれ補正 未搭載(手ぶれ補正レンズで対応)
電 源 専用リチウムイオン充電池
バッテリー寿命 撮影可能枚数:ストロボ発光なし:約500枚、ストロボ50%発光:約360枚
大きさ 126.5(幅)×94.2(高)×65(奥行)mm
質量(本体のみ) 510g