AF時代に突入して久しいが、その間標準50mmレンズは標準ズームにその立場を奪われ、新設計のレンズが発売されることはほとんどなくなってしまった。現在各社から発売されている50mmレンズのほとんどが、20年近く前の光学設計で、新しい50mmは以前から待ち望まれていた。
キヤノンには過去EF50mm F1.0L USMというレンズが存在したが、生産中止になってしまった。社内基準を満たさなかったのか、需要が少なかったのかは分からないが、EF85mm F1.2L USMと並んで目玉のレンズであった。50mm F1.0Lはかなりのじゃじゃ馬で、絞り開放では使いこなしが難しいレンズで、描写も素直とはいえないものだった。
今回のEF50mm F1.2Lは最新の光学技術で、クセのない素直な描写を目指したのだろう。解像度が高く、ボケも素直で50mm F1.0Lほど被写体を選ばない。ただ、絞り開放では周辺光量落ちはそれなりに覚悟しなくてはならない。大口径であるがゆえに仕方がないのだろう。
フォーカス方式は、描写性能を考慮して全群繰り出し方式が採用されている。AFスピードを優先するならばインナーフォーカスが良いのだろうが、全域で安定した性能を発揮するには、昔ながらの繰り出し方式が最良の選択だったのだろう。AFスピードは重いレンズ群を移動させるにもかかわらず高速で、EF85mm F1.2Lよりも速い。
当然USMのフルタイムマニュアルフォーカスで、切り替え無しで瞬時にMFへ移行できる。フォーカスリングは幅広で、リングの操作性は適度なトルクがあって良好だ。
レンズは50mmとは思えないくらい大きく、フィルター径は72mmもある。重量は580gあり、普及クラスのボディよりも重い。F1.4としては大柄で重い同社のEF50mm F1.4の倍の重量があるのだ。それでもEF50mm F1.0Lの半分以下の重量だ。どちらにしてもこれだけ大きいと、装着するボディを選んでしまう。また、極端にピントが浅いので、精度の高いAF、MF時には優れたファインダーが必要となる。そうなるとEOS Kiss Digital Xでは役不足。最低でもEOS 30D、できればEOS 5D以上のボディが欲しい。
EF50mm F1.2Lは描写性能、操作性の優れたレンズだ。ただこれだけ重く、高価だと一般的ではない。50mm F1.2はMF時代、ちょっと背伸びをして買うことの出来る価格帯だったが、定価で20万円、実売で15万円程度ではなかなか手を出せるシロモノではない。正直コストパフォーマンス云々するレンズではないが、割高なのは否めない。