シグマ DP1

フォトキナ2006でコンセプトモデルを展示してから1年半。デジタル一眼レフ用の大型センサーを搭載したコンパクトデジタルカメラ「シグマ DP1」がようやく発売になった。価格は量販店で99,800円(発売時)と、普及クラスのデジタル一眼レフのレンズキットよりも高い価格設定だ。

主な特徴
・20.7×13.8mmの大型Foveon X3センサー
・28mm相当の高性能単焦点レンズ
・扱いやすいマニュアルフォーカス
2008年3月発売 発売時参考価格:99,800円  シグマ DP1 価格比較


コンパクトデジタルカメラ唯一の大型センサー
シグマ DP1の魅力はなんと言っても、コンパクトデジタルカメラとしては初の、大型センサーによる画質の良さだ。搭載されるセンサーは20.7×13.8mmのFoveon X3センサー。このセンサーはCMOSセンサーの一種だが、他のセンサーは大きく異なる。一般的なセンサーは光の強弱しか取り込めないため、センサーの上にRGBの3原色のフィルターをベイヤー配列して、色情報を取り込んでいる。そのため1画素につき1色しか取り込めず、他の2色は補間処理を行うことで画像を作り出している。

ところがこのFoveon X3センサーは3層構造になっていて、各層ごとにRGBをわけて取り込むため、補間処理が不要になる。またフィルターが不要なため、偽色が発生がなく、解像度を低下させてしまうローパスフィルターが不要になる。その結果、記録画素数は2640×1760の460万画素と少ないにもかかわらず、非常に解像度が高い画質が可能になる。

画質はデジタル一眼レフ並かそれ以上
実際、シグマ DP1の画質はモニターでピクセル等倍で鑑賞すると、その精細感の高さに息を呑む。デジタル一眼レフでも、ここまでドットごとの表現力が豊かなカメラは他にないといって良いだろう。さらに画像サイズが小さいのでファイルサイズも小さくてすむ。

DP1にデジタル一眼レフの1400万画素相当の解像度があるかと言うと疑問だが、少なくとも1000万画素クラスのデジタル一眼レフ並の解像度はありそうだ。

同じセンサーを搭載するSD14でも指摘されているが、このセンサーは高感度はあまり得意ではないようだ。とはいってもデジタル一眼レフと比較しての話で、一般的なコンパクトデジタルカメラの1/2.5型センサーの12倍もの面積があるだけあって、高感度時のノイズの少なさは比較にならない。最高感度自体はISO800止まりで、最近のコンパクトデジカメにも及ばないが、その画質は比較にならない。ISO800でもノイズ、解像感の劣化は少なく、どの感度でもギスギスした感じがないのだ。

コンパクトデジタルカメラとの差が感じ取れるのは解像感、高感度画質よりも、広いダイナミックレンジとなめらかな階調表現だ。今やコンパクトデジタルカメラでも1200万画素機も登場し、解像度に限ってはデジタル一眼レフに引けをとらない機種も少なくない。しかし、リアルさという点では一歩も二歩も譲る。それは、センサーサイズの違いによるもので、DP1には、とかく平板な描写になりがちなコンパクトデジタルカメラと比較するのもナンセンスなくらい立体感、質感描写が優れている。

単焦点、35mm換算28mm F4レンズ搭載
レンズは単焦点の16.6mm F4、35mm換算すると28mm相当の広角レンズ。開放F値が単焦点レンズの割りに暗いのは、これ以上レンズユニットを大型化しないためと、描写性能確保のためだろう。さすがに絞り開放では若干画面周辺部の画質劣化が見られるようだが、周辺光量落ち、湾曲収差はほとんど気にならないレベルで、コンパクトデジタルカメラはおろか、デジタル一眼レフの普及タイプズームレンズよりも描写性能はずっと上だ。最短撮影距離は0.3mで、標準的な一眼レフの28mm単焦点レンズと変わらない。

あまり高そうに見えないデザイン、質感
ボディサイズはレンズの出っ張りがあるので、標準的な3倍ズームのコンパクトデジタルカメラよりもひとまわり大きいが、デジタル一眼レフの大型センサーを搭載していることを考えると十分以上にコンパクトだ。スクエアでシンプルなデザイン、悪く言えば味も素っ気もないデザインだ。外装はアルミ合金らしいが、触ってみるまではプラスッチックかと思うような質感で、このあたりの表現が下手だ。

書き込みの遅さ、バッテリーの持ちも悪さなど欠点は多い
画質に関してはいいことずくめのDP1だが、だれでも使えるカメラではない。DP1を使ってみるとまず、書き込みの遅さに驚くだろう。JPEGでもシャッターを切ると、次のコマに移れるまでに3秒くらいかかり、RAWだと確実に5秒以上はかかる。起動やAFの合焦スピードも速いとは言えず、速写性という点では10年前のデジカメと変わらない印象だ。

バッテリーのもちの悪さもあちこちで指摘されているようだ。CIPA基準では約250枚だが、バッテリー1本で1日撮影するのは心もとない。安心して撮影に没頭するには予備のバッテリーを常備する必要がありそうだ。幸い1個2,310円と安いので、予備で2本くらいは持っていてもいいかもしれない。

液晶モニターの画質も現在のレベルに追いついていない。2.5型23万画素とスペック的には標準的だが色味がちょっとおかしいし、周りが明るいととたんに見づらくなる。バッテリー消費を抑えるためにも、光学ファインダーが欲しくなるが、別売りで21,000円もするので、なかなか簡単に手が出せない。

唯一無二で存在意義がある
DP1は他のコンパクトデジカメでは味わえない素晴らしい画質が魅力だが、いかんせん使い勝手が悪い。おそらく、キヤノンやニコン、ソニーなどが作っていたら、もう少しこのあたりが改善されていただろう。しかしこの時期にこういったカメラを作り、世に送り出すメーカーはシグマ以外にはいなかったのではないだろうか。普通に写真をとる人がこのカメラを買ったら、あまりの扱いにくさに閉口するだろう。DP1はじっくりと一枚一枚被写体と向き合って、カメラに収めていくことができるだけの余裕がある人のカメラだ。