カシオ EXILIM PRO EX-F1

カシオからとても遊び甲斐のあるカメラ「EXILIM PRO EX-F1」が登場した。価格は10万円強と、コンパクトデジタルカメラとしてはかなり高価だが、これまで業務用カメラでしか可能でなかった、60コマ/秒の超高速連写、300fps〜1200fpsのハイスピード動画と、人間の視覚を超えた映像を可能にしている。
主な特徴
・600万画素フル画素で60コマ/秒の撮影が可能
・最高1200fpsのハイスピード動画
・シャッターを押す前の画像を記録できる「パスト連写」
・35mm換算36〜432mm相当の光学12倍ズーム
2008年3月発売 発売時参考価格:118,000円  カシオ EXILIM PRO EX-F1価格比較


600万画素で60コマ/秒の超高速連写
「EXILIM PRO EX-F1」と同じコンセプトのデジタルカメラは過去にも存在した。2000年に発売された「オリンパス E-100RS」は、140万画素で15コマ/秒の連写を実現した10倍ズーム機で、「EXILIM PRO EX-F1」と同じく手ぶれ補正機構を搭載している。しかしEX-F1と比較すると、その性能差は比較にならない。EX-F1は600万画素を60コマ/秒で連写でき、動画にかんしては1200fpsのハイスピード動画のほか1920×1080ピクセルのフルHD動画の記録が可能となっている。

EX-F1の連写速度は1コマ/秒から最高60コマ/秒まで設定できる。連写速度が上がると連続撮影時間が短くなり、最高の60コマ/秒では1秒間の撮影となる。連続撮影時間は撮影コマ数できまり、バッファ容量の60コマまでとなる。連続撮影時間を長くしたいのならば、例えば10コマ/秒に設定すれば6秒間撮影が可能 になる。

EX-F1は大容量バッファメモリを生かして、シャッターを押す前の60コマを記録できる「パスト連写」を搭載。決定的なシャッターチャンスは気付いてからシャッターを押しても間に合わないことも多いので、この機能はとても重宝する。

また、被写体がフレームアウトする前後を記録する「ムーブアウト連写」フレームインする前後を記録できる「ムーブイン連写」といった自動的にシャッタ ーを切ってくれる機能も搭載している。この他、電子シャ ッターを利用した1/40000秒の超高速シャッターで人間の視覚を越えた決定的瞬間を納めることができる。ただ、よほど光量の豊富でない場所でない限り綺麗な写真は撮れない。大抵は感度アップして画質が劣化したり、露出アンダーになってしまうだろう。

1200コマ/秒のハイスピード動画、1920×1080フルHD記録が可能
動画は最高1200コマ/秒のハイスピード動画が可能。ただし1200コマ/秒では画面サイズが336×96と小さく、極端に横長になる上に、よほど光量の多いところでないと、キレイな絵が撮れない。実用的なハイスピード動画は512×384ピクセルで記録できる300コマ/秒までと考えた方が良さそうだ。

動画はこのほか640×480 30fpsのスタンダード動画、1920×1080 60フィールド/秒とHDビデオカメラと同等のフルHD動画が可能となっている。フルHDの画質はなかなか良く、4GBのSDカードにフルHD(1920×1080)で36分、HD(1280×720)で約1時間記録できるので、ビデオカメラの代わりとしての用途も考えられなくはない。

書き込み時間の短縮はSDカード次第
撮像素子はソニー製1/1.8 型、有効600万画素の高速CMOSセンサーで、このセンサーがEX-F1の高速連写のカギを握っている。また、ここまで高速連写が可能なのは、フル画素60コマ分の容量を持つ、大容量バッファメモリによるところも大きい。高速連写した画像は、まずバッファメモリに一時保管され、あとから一気にSDメモリーカードに書き込まれる。

メモリがいっぱいになってから書き込むと、かなり長い時間待たされ、その間は何もできない。書き込み時間は使用するSDカードにもより、最速のclass6でも20秒近く待たされる。当然、書き込み速度の遅いclass2やclass4ではこれよりも待ち時間が長くなる。書き込み時間はカメラ側で頑張ってもこれ以上どうにもならず、今後さらに高速なSDメモリーカードが発売されれば、書き込みに待たされる時間も短くなるだろう。

光学12倍ズーム搭載で、並のデジタル一眼レフ以上の存在感
レンズは35mm 換算36-432mm相当の12倍ズーム、手ブレ補正は撮像素子シフト方式となっている。ワイド側の画角が不足しているが、このカメラの用途を考えたら十分なのかも しれない。むしろ、野鳥撮影やスポーツなどに使われることを考えると、さらに超望遠がほしくなるのではないだろうか。

大きめの撮像素子に光学12倍、F2.7-4.8 と比較的明るいレンズを搭載しているのでかなり大振りなボディだ。並の普及タイプデジタル一眼レフ+標準ズームよりも大きいので、価格とともにこのサイズが購入を躊躇させると原因になると思う。

レンズの先端に一見フォーカスリングのようなリングがついているが、ファンクションリングと呼ばれるもので、連写スピード、ズーム、フォーカスの3つの機能のコントロ ールに割当てられていている。一見、操作性が良さそうに見えるファンクションリングだが、フォーカスリングとして使うとあまり芳しいものではない。電子リングなので反応がワンテンポ遅れるし、特別に画質が良くない液晶、ビューファインダーでフォーカシングするのは難がある。

画質云々言うカメラではないが、A4サイズくらいならば十分鑑賞に耐えられる。 ただ1/1.8型600万画素と画素ピッチが大きめの割りにはノイズが多く、ISO800以上はあまり使いたくなくなる。積極的に感度を上げて、速いシャッタースピード を稼ぎたいカメラだけに、もう少し高感度画質の向上を望みたい。

他社に先駆けて発売したことに意義がある歴史的なカメラ
EX-F1はもちろんだれにでも勧められるカメラではなく、かなりユーザーが限定される特殊なカメラだ。超高速連写が必要なければEX-F1よりも小さく軽く、画質が良くてずっと安いカメラはいくらでもある。しかしEX-F1の超高速連写は、民生機の中では今のところ、他のどの機種にもない機能でそれが大きな魅力になっている。

ただ、AF性能、さらなる画質の向上など今後の課題も多く、カメラとしての完成度はまだまだといった印象だ。しかし、カシオがこういうエポックメイキングなカメラを他社に先んじて商品化したことは多いに評価できる。EX-F1は、14年前、世間を賑わせたQV10同様、歴史に残るデジタルカメラになるかもしれない。